第425回「還ってきた顔」

この黒柳徹子風の人は、
作者のひろゆきさんだったんですね!

ふふ。黒柳徹子さんみたいな髪型の人だ。いいですねー。色もカラフルで、ウキウキします。ひろゆきさんって、体調を崩してずっと休んでいた彼ですよね。
そう。彼の長いブランクの後に生まれた「夢の枝豆」(第382回)では、よこはちさんが「トンネルを抜けた先にあったのは…枝豆だった」って、作品を評していたけれど、こちらはそのあとの作品。
そうだ。調子の悪さが落ち着いて、やっと描き始められた作品が、カラフルな枝豆だったんですよね。人が描けるようになったって、もしかしてすごい変化だったりするんですか?
そう。これは調子のいいときをとらえて、描いてもらったんだ。フェースでの彼の席はドアからわずか10mくらいなのだけれど、調子の悪いときは2〜3分もかかる。ゆっくりゆっくり手も足もほとんど静止しているみたい。
歩くのもつらいんでしょうねぇ…。
この絵のときは、ドアを開けると私にニッと笑いかけて「おはようございます」って感じだった。「スケッチブックと色鉛筆を出してね」と声かけすると「スケッチブックと色鉛筆出してね」と言いながら、手もスムーズに動いた。
おお、少しだけ調子よさげ!
このときを捉えて、枝豆から他の画題に移れるかなと「今日は何を描きますか? お花、顔? ひろゆきさん?」と誘導してみた。すると「ヒロくん、描く」と答えた。それで「そうか、ひろゆきさんを描くんだ! いいね」とさらに後押し。
あっ! この、黒柳徹子風の人は、作者のひろゆきさんだったんですね! 今のひろゆきさんの髪型がどうなっているのか、実際に見てみたい。
これね、描き方は高校を卒業した頃と変わらないんだけど、塗り方が違うんだ。昔のように、上から重ねて塗り込んでいくということをしない。ぼくは、昔の彼の絵を知っているから、どうしても対比しちゃうんだよね。
そういえば、昔はもっと塗りこまれていて、毛糸みたいな暖かさがあったような気もしますね。でも、今もいいじゃないですか! とりあえず私は、この髪型が大好きです。何というか、丸みもちょうどいい! とても気に入りました!
うん、これが今のひろゆきさんの世界なんだと思う。ぼくには、現実世界とは少し距離を置いて、詩的(私的)でとても静かな世界のように見える。それが、彼の歩き方にもあらわれているのかもしれないなんて思う。
2017.12.1(fri)




よこはちは、名もない女性編集者。障がいを越えて表現を楽しむアートスペース「フェースofワンダー」の仲間たちの作品に惹かれ、主宰者のまねきねこさんに「くすくすミュージアム」で絵を紹介しないかと持ちかけました。
まねきねこさんは、「フェースofワンダー」で個性に合わせた素材、道具、画法開発を大切に考えた活動を展開するかたわら、「指導者養成講座」にも取り組んでいる人物です。 主著に『アートびっくり箱』(学研)、『続アートびっくり箱』(学研)、『ねっこのルーティ』(パロル舎)、『ねっこのルーティ(電子書籍版)』(BowBooks)など。









水性色鉛筆/350×250mm




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