第399回「青い窓と赤い花」

これ、スイカを描いてたんじゃないんですね。

この絵おもしろいですねー。スイカですか。四角いスイカ。白い種も黒い種もあるし、真っ赤に熟れて美味しそう。皮の緑色も、まさにスイカの色ですよ。あー、スイカ食べたくなってきた。
おー、本当だ。そうだね。
これ、どうやって描いたんですか?
彼はまず、スケッチブックを出して黙々と、花模様やぐるぐる線をびっしり描く。
花模様やぐるぐる線?
でも、すぐに描き終え「終わりました、終わりました、次は? 次は?」と、次の活動を聞きに来ます。
えっ? あれ?
ぼくは、その日の天候などを言葉にして「風を描きましょうか」「雨を描きましょうか」とかって伝える。すると、自分に言い聞かせるように「うん、雨、描きます」と言葉にして、まっすぐな線を花模様の線の上に描き始める。
あの〜、スイカ……。
ある程度描くと、また「終わりました、終わりました、次は?」と催促に来ます。で、次は「絵の具で塗りましょうか?」というと、「ハイ、塗ります」と納得し、準備。「お花を描きます」と独り言のように言って、色を塗っていきます。
……これ、スイカを描いてたんじゃないんですね。けんさんと、まねきねこさんとの会話で、自然にできていった形だったんですね。
そうなんだよ。こういう言葉のやり取りで生まれる絵を、ぼくは「関係性のアート」って呼んでいる。勘違いしてほしくないのだけれど、彼が次の活動を聞きに来るのは、指示待ちというより、積極的な彼の催促なんだ。
けんさん、やる気満々なんですね。
この時間は彼にとって、とても大切な時間のようで1時間ほど描いてお母さんが迎えにくると、「今日はがんばった」と、嬉しそうに報告する。
そっかー。いい時間ですね。けんさん、また奇跡のスイカを描いてください。いや、それにしてもスイカですよねー。
2017.04.21(fri)




よこはちは、名もない女性編集者。障がいを越えて表現を楽しむアートスペース「フェースofワンダー」の仲間たちの作品に惹かれ、主宰者のまねきねこさんに「くすくすミュージアム」で絵を紹介しないかと持ちかけました。
まねきねこさんは、「フェースofワンダー」で個性に合わせた素材、道具、画法開発を大切に考えた活動を展開するかたわら、「指導者養成講座」にも取り組んでいる人物です。 主著に『アートびっくり箱』(学研)、『続アートびっくり箱』(学研)、『ねっこのルーティ』(パロル舎)、『ねっこのルーティ(電子書籍版)』(BowBooks)など。









絵の具/サインペン/色鉛筆/410×320mm




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