第295回「仕方がないから描いてあげよう!」

最初は、モジモジ。

「かねこせんせい」って描いてある。ふふふ…これ、まねきねこさんなんですね。ずいぶん髪の毛薄くなっちゃってますね(笑)
この頃のぼくの頭は、夏毛にしたばかりで、刈り上げた坊主頭に近い(頭頂部3mm)。黒いシャツ姿で、ぼくの特徴がよく出ている。
絵の下や右に「ばばゆり」って描いてある。ゆりちゃんに描いてもらったんですね。
うん。ワークショップの依頼が来た団体から、「チラシに使う似顔絵があったら送ってください」って言われて、誰に描いてもらおうか考えていたんだけれど、彼女のくしゃくしゃの絵を見ていたら、いいなぁって思って頼んだんだよ。
いいなぁ、私も描いてもらいたいなぁ。絵を頼まれたとき、ゆりちゃんはどういう反応でした?
最初は、モジモジ。下を向いて「んー、どうしようかなぁ」。そばにいたお母さんが、「描いてあげようよ。ゆりちゃんの絵が好きなんだって」って口添えしてくれた。
お母さん! そうなんです。私もゆりちゃんの絵が好きなんです!
すると、がばっと顔をあげ「仕方ないなぁ、描いてあげる!」って、くりくりした目を輝かせて描いてくれた。まさに、ゆりさんのくしゃくしゃタッチの絵。短い針金をつなぎ合わせたような線で、ためらいなくグイグイ描いている。
このまねきねこさん、可愛いですよね。左はスカートはいてスキップしているみたい。右は、腰に手を当ててお尻を振って踊ってるみたい。動きがある! 顔はまじめですね(笑)
鼻息の荒そうな鼻の穴や、三白眼気味の目も「あぁ、ぼくだなぁ」って思う(笑)。仕方ないなぁってわりには、丁寧に描いてくれてるね。色鉛筆で色をつけているのは、お母さんが「色もつけてあげようよ」って言ってくれたから。
こんな絵を描いてもらったら、うれしいですよねぇ。私だったら宝物にしちゃうな。
2015.06.19(fri)




よこはちは、名もない女性編集者。障がいを越えて表現を楽しむアートスペース「フェースofワンダー」の仲間たちの作品に惹かれ、主宰者のまねきねこさんに「くすくすミュージアム」で絵を紹介しないかと持ちかけました。
まねきねこさんは、「フェースofワンダー」で個性に合わせた素材、道具、画法開発を大切に考えた活動を展開するかたわら、「指導者養成講座」にも取り組んでいる人物です。 主著に『アートびっくり箱』(学研)、『続アートびっくり箱』(学研)、『ねっこのルーティ』(パロル舎)、『ねっこのルーティ(電子書籍版)』(BowBooks)など。




ボールペン/色鉛筆/210×150mm




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