第285回「静物たちのジャズ」

背景の白はステンレスだったのか!

コーラの画家、モリヤマくんの最新作ですね。
いたずら好きでめんどくさがりなモリヤマくんの作品! 私もめんどくさがりだから、彼とは通じる部分があると勝手に思っているんですよ。 彼の場合、めんどくさがりなところが、いい決断力として絵に反映されていますよね。
あはは。この絵は前に色鉛筆で描いていたビンやヤカンの絵に、アクリル絵の具で大胆に線をつけたもの。いかにもモリヤマくんって感じの単純で明快な線が、とても面白い。
私は、シャンプーのボトル(?)の周りを囲ったあずき色の太線がきれいだなぁと思います。
ジョッキのオレンジ色の線や、茶碗の抹茶色の線も迷いなく重なり合って、モノの存在感が浮き彫りにされている。色鉛筆で塗り込まれた器の色や模様もさりげなくて、アクリル絵の具と対照的な感覚がいいね。
それにしてもこれ、どこで描いたんでしょう? 驚くほど静かな背景ですね。夜なのかな? 真夜中、台所の食器たちが騒ぎだしたみたい。この色合いからして、結構ガチャガチャしゃべってますよね(笑)
最初は、どうして背景をこんな青紫にしたんだろうって思ったけれど、こうして見るといいねぇ。この絵を見ていると、ぼくは深夜にジャズを聞いているような気がする。
おぉ、おしゃれ!
二つのヤカン、木の取っ手のついたフォーク、コップのアルファベット風の模様も生きてる。左右の白、彼にとっては洗い場のステンレスか鏡かもしれないけど、絶妙なバランス。モリヤマくんが刻む、明快でエッジの効いたリズム…。
あっ、背景の白はステンレスだったのか!
きっと、彼の絵は即興のジャズなんだ。そう思うと、もう一度彼の作品を見直してみたくなるなぁ。
2015.05.12(tue)




よこはちは、名もない女性編集者。障がいを越えて表現を楽しむアートスペース「フェースofワンダー」の仲間たちの作品に惹かれ、主宰者のまねきねこさんに「くすくすミュージアム」で絵を紹介しないかと持ちかけました。
まねきねこさんは、「フェースofワンダー」で個性に合わせた素材、道具、画法開発を大切に考えた活動を展開するかたわら、「指導者養成講座」にも取り組んでいる人物です。 主著に『アートびっくり箱』(学研)、『続アートびっくり箱』(学研)、『ねっこのルーティ』(パロル舎)、『ねっこのルーティ(電子書籍版)』(BowBooks)など。




●水性色鉛筆/アクリル絵の具/310×410mm




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