第274回「謎の深海魚」

この突起、
ピョロピョロしていて可愛いですね。

点描の画家、hinoさんの絵だ。じっと見ていると、エラやヒレの細かな点描に惹きつけられる。これは、画像じゃわからないかもしれない。
ええ。それが、もったいないなくてたまらないです。これ本物だと、海のかすかな揺らぎというか、水の動きまでが丁寧に描き込まれているのがわかるんですよね。ここまで描けるhinoさんに、圧倒的な才能を感じます。
この深海魚のようなテーマは、彼が高校生だった頃からずっと取り組んでいる。その頃より緻密さやデザイン性が出てきて、彼の独自のセンスがはっきりしてきている気がする。
私が知る限り彼はずっとすごいんですが、そのすごさも変化してきているんですね。今回の絵に関して私が気になるのは、深海魚の舌です。この舌に、やたらリアリティを感じるんですよ。ここだけ色が濃いからかもしれません。
ぼくは、とがった顎の下にある糸状の突起が気になる。この絵の中で浮いているというか、真ん中にあるから目立つんだよね。彼にどうしてこれをつけたのか聞いても「わかりません。ただ描きたかったから」って言うんだよね。
おっ、これピョロピョロしていて可愛いですね。
この突起については、ちょっと驚いたことがある。この前BSテレビで「深海のロストワールド」っていう番組を観てたんだけれど、そこでこの深海魚とよく似た魚が出てきたんだ。「あっ、彼の描いた魚だ」って、すぐに思った。
えっ、突起がついてたんですか!?
うん。番組では深海魚で顎下にヒレのような突起を持っている魚は撮影されたことがないので、新発見かって大騒ぎになるんだけれど、死体として4体だけ標本にされていることがわかった。名前はヒョウモンシャチブリ。
すごい名前ですね(笑)、シャチもブリも入ってる。彼は、この深海魚のことを知っていたんでしょうか。
彼がこれを描いたのは1年以上も前だから、番組を観ていたはずはない。ぼくは、彼の想像力と真っ暗な深海とがつながっているんじゃないかとワクワクした(笑)
絵を描いているとき、hinoさんの精神は、深海のような深い深い場所までもぐっているのかもしれませんね。
もしかしたら、右のちょっと硬そうな細長く伸びている海藻のようなものも、ぼくらの知らない深海にある新種の生き物なのかもしれない(笑)
2015.03.31(tue)




よこはちは、名もない女性編集者。障がいを越えて表現を楽しむアートスペース「フェースofワンダー」の仲間たちの作品に惹かれ、主宰者のまねきねこさんに「くすくすミュージアム」で絵を紹介しないかと持ちかけました。
まねきねこさんは、「フェースofワンダー」で個性に合わせた素材、道具、画法開発を大切に考えた活動を展開するかたわら、「指導者養成講座」にも取り組んでいる人物です。 主著に『アートびっくり箱』(学研)、『続アートびっくり箱』(学研)、『ねっこのルーティ』(パロル舎)、『ねっこのルーティ(電子書籍版)』(BowBooks)など。




●ボールペン/310×410mm




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