第141回「ロックンロールアート」

小麦粉も混ぜてあるかもしれない。

これは、とても懐かしい作品です。橋本のフェースofワンダーで活動していた、たいきさんの作品。
ああ! 岡山に引っ越していっちゃった、たいきくんですか。本当、懐かしい。すごく楽しそうに絵を描いてましたよね。私が見たときは、マスクの上からくわえた筆で、嬉しそうに紙をベシベシ叩いていました。
会った頃は中学生だった。坊主刈りで、ふっくらとした大きな頭と柔和な表情で、どこかで会ったことがある人だなぁと思ったら、中国の南画なんかでよく描かれる布袋さんに似ているんだよ(笑)
そういえば、似てたかも。しあわせを運んできてくれてる感じがしましたね。この絵、すごく分厚くて油絵みたいですがどうやって描いているんですか?
これは、絵の具にボンドや砂を混ぜたオリジナル絵の具をつかってる。もしかしたら、小麦粉も混ぜてあるかもしれない。
小麦粉? 美味しそうじゃないですか。どうして、そんなにいろいろ混ぜたんですか? そこから自由なアートの始まり? もしや、混ぜた理由を聞くなんて、愚問ですか?
そんなことないよ(笑)。彼はみんなと描き始めて、手の動きが大きくなりスピードも増し、いろんな曲線やガチャガチャ線を楽しみ始めたので、その線の表情をもっと作品化したかったんだ。
なるほど〜。グルグル描いた線とか、ピシャピシャ打ちつけてる線とか、楽しんでいる感じが伝わってきますもんね。
どんどんチューブの絵の具を重ねて、掻き回すみたいに描いて「アートのロックンロールや!」って感じ。普通の画用紙じゃ、すぐに破れて持たないので、ダンボールやケーキの箱みたいな厚紙に描いている。
ロックンロール、いいですね! 筆をくわえていた彼の仕草、ちょっとロックな感じしましたもん。アートの常識を打ち破れって感じで、かっこよかったなぁ。
こんなに本格的に抽象画にのめり込めたのも、お母さんがオリジナル絵の具の楽しさをわかってくれて、その場でボンドと絵の具を混ぜたりして積極的に関わってくれたから。
お母さんの力って大切だし、偉大ですよね。フェースに来ているお母さんたちは、尊敬できる人が多いなぁと思います。そんなお母さんたちから信頼されているまねきねこさんも、やっぱりすごいんですけどね。
2013.11.26(tue)




よこはちは、名もない女性編集者。障がいを越えて表現を楽しむアートスペース「フェースofワンダー」の仲間たちの作品に惹かれ、主宰者のまねきねこさんに「くすくすミュージアム」で絵を紹介しないかと持ちかけました。
まねきねこさんは、「フェースofワンダー」で個性に合わせた素材、道具、画法開発を大切に考えた活動を展開するかたわら、「指導者養成講座」にも取り組んでいる人物です。 主著に『アートびっくり箱』(学研)、『続アートびっくり箱』(学研)、『ねっこのルーティ』(パロル舎)、『ねっこのルーティ(電子書籍版)』(BowBooks)など。




ボンド/水性絵の具/245×350mm




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