第350回「模写/魚の周りに」

TAROさんからクレーへのクレーム?

おっ、くっきりはっきりTAROさんの絵ですね!
そう。パッと見ただけでわかる(笑)。彼と出会ったのは高1のときだから、もうずいぶん一緒に描いているけれど、彼ほど描き方が変わらない人はいない。一貫して、ものの形を明確に単純化して色も単色で塗り込んでいく。
この絵は模写なんですよね?
うん。クレーの「魚の周りに」って言われている作品の模写。だけど、クレー独特の繊細な表現がばっさり切り捨てられている。原作とこの絵を比べてみるとわかるけれど、ものの見事というほかない。
わっ、本当だ! 似てるけど、全然違う。TAROさんの手にかかると、何ていうか…かわいくなってる! これはぜひ、みなさんにも本物と見比べて楽しんでほしいですね〜。ぜひ「クレー 魚の周りに」で検索してみてください。
お皿の上の魚も、クレーはうろこや背びれ、尾ひれ、体の模様も細かく描き込んでいるのだけれど、彼にかかると魚の形だけに省略される。
でも、TAROさんの魚、クレーの魚と比べても見劣りしませんよ。見劣りしないって言うと違うかな、これはこれで完成されてる。特に魚の目がいいですね!
原作の目玉は目立たないけれど、TARO画伯はそれが大切だと思ったんだろうね。絵の中心になるように、極めて明確に白と黒で描かれている。「クレーさん、世界はこうなんだよ。こう描かなくちゃ」と言っている画伯が見えるようだ(笑)。
あの、私すごく気になっていることがあるんですけど、原作とTAROさんの絵、左右の向きが逆になってますよね。これってアレですかね、「焼き魚の向きは左だろ!」っていうTAROさんからクレーへのクレームなんですかね(笑)。
あはは。上手いこと言うねぇ。
いえ、違うんです、ダジャレで言ったんじゃありません!
2016.04.29(fri)




よこはちは、名もない女性編集者。障がいを越えて表現を楽しむアートスペース「フェースofワンダー」の仲間たちの作品に惹かれ、主宰者のまねきねこさんに「くすくすミュージアム」で絵を紹介しないかと持ちかけました。
まねきねこさんは、「フェースofワンダー」で個性に合わせた素材、道具、画法開発を大切に考えた活動を展開するかたわら、「指導者養成講座」にも取り組んでいる人物です。 主著に『アートびっくり箱』(学研)、『続アートびっくり箱』(学研)、『ねっこのルーティ』(パロル舎)、『ねっこのルーティ(電子書籍版)』(BowBooks)など。









アクリル絵の具/310×405mm




かんそうを送る