第324回「虹、ばしゃーん!」

とにかく、躍動感がすごい。

この絵、集中したときの、りほさんの様子がリアルに伝わってくる。目力がすごくて、息遣いもふう、ふうって、体の中から湧いてくる息を吐き出してるみたい。
りほちゃんのクレパスに込められた勢いが、真っすぐこっちに伝わってきます。私、このパワーあふれる虹の絵、すごく好きです。
手前の大きな波模様の虹のうねり具合、すごいねぇ。更にその向こう、左側から山津波のように、もう一つ虹が覆いかぶさってくる。右側には、遠景のように三つ目の虹が遠ざかっていくように描かれている。
勢いが有り余って、雲の上に飛び出したみたい。雲の上に、どんどん虹が現れたり消えたり……とにかく、躍動感がすごい。
絵を描きにくると、彼女の中一杯に詰まっているいろんなイメージがあふれてくるみたい。すごくダイナミックな表現になるんだ。
このときに詰まっていたイメージは、虹だったんですね。
そう。波とか海、野菜や玉ねぎやタコ、星とかシャボン玉なんてときもあったね。どれも大らかな太い線の圧倒的な動きが魅力。今はもうやらないけれど、この絵を描いた頃は、絵の周りを黒いクレパスで縁取りすることがよくあった。
あ、本当だ、されてる。
縁取りすることで、無意識に絵全体をまとめようとしていたのかも。彼女は、今も出来上がり近くになると、一気に太い筆で上から塗りつぶすことがある。描いてる途中で別の力が湧いてきて、その絵がどうでもよくなるみたいにね。
描いたものが小さく思えてきて、もっと大きく、もっとのびのび描きたくなってきちゃうんでしょうか。でもその気持ち、ちょっとわかるなぁ。私も、自分のやったことが、すごくちっぽけに思えることってありますもん。
ぼくなんかは、それを「ああ、もったいない!」なんて、せこいことを思ってしまうんだけれど(笑)。彼女にはそれがないよね。描きたいという想い、エネルギーをよく表現している。傑作の一つかもしれないね。
2015.10.23(fri)




よこはちは、名もない女性編集者。障がいを越えて表現を楽しむアートスペース「フェースofワンダー」の仲間たちの作品に惹かれ、主宰者のまねきねこさんに「くすくすミュージアム」で絵を紹介しないかと持ちかけました。
まねきねこさんは、「フェースofワンダー」で個性に合わせた素材、道具、画法開発を大切に考えた活動を展開するかたわら、「指導者養成講座」にも取り組んでいる人物です。 主著に『アートびっくり箱』(学研)、『続アートびっくり箱』(学研)、『ねっこのルーティ』(パロル舎)、『ねっこのルーティ(電子書籍版)』(BowBooks)など。




クレパス/210×300mm




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