第314回「くすくすなおしり」

普通なら、こんな絵は浮かんでこないよ。

とても達者な絵だよね。スピードが落ちることなくさらさらと描いていて、線に全く迷いがない。多分だけれど、まずはこれを描こうという思いやアイデアがあって、それを紙にどう描くかも自然に浮かんできてる気がするな。
いつ、どこで、こんなおもしろいシーンを描こうって思うんだろう。
とてもユーモアがあって、くすくす笑いたくなってくるよね。もしかしたらこのくすくす感は、ひろあきさんの持って生まれた才能かもしれない。ぼくらは、そんな彼の掌の上で笑ったり、驚いたりしてるのかもしれない。
笑わせてくれたり、驚かせてくれたりするんだったら、掌の上でもいいなぁ。
例えば、おしりを向けてる二匹の絵。普通ならこんな絵は浮かんでこないよ。それがポーンと描かれる。何の説明もないけれど、何だか惹きつけられる。
ほんと。この後ろ向きの二匹を見たときは、感心と尊敬が入り交じった気持ちになりましたよ。
しっぽの位置も見て。ゾウはおしりの穴が見えないようにまっすぐ垂れていて、ライオンは無頓着にしっぽを横に向けている。それで、何となく二匹の性格がわかるような気がする(笑)
さらさらと描いているように見えて、実は細かな心配りがあると……!
二枚目の絵では、しっぽの位置や形が変わっている。踏ん張っている足の位置もそう。一枚目と二枚目では変えている。意図的なんだね。
二枚目で振り返ったときのゾウとライオンも、迷惑そうな雰囲気がサラッと伝わってくる。このサラッとすごい感じ、ホント何なんでしょうね!
ぼくらは一枚目を、二匹並んで何してるんだろう? って感じで見て、それから二枚目を見ると、プッと吹き出しそうになる。これを、中学一年生のひろあきさんが描くんだよ。いやぁ、大したもんだといつも舌を巻くね。
2015.09.01(tue)




よこはちは、名もない女性編集者。障がいを越えて表現を楽しむアートスペース「フェースofワンダー」の仲間たちの作品に惹かれ、主宰者のまねきねこさんに「くすくすミュージアム」で絵を紹介しないかと持ちかけました。
まねきねこさんは、「フェースofワンダー」で個性に合わせた素材、道具、画法開発を大切に考えた活動を展開するかたわら、「指導者養成講座」にも取り組んでいる人物です。 主著に『アートびっくり箱』(学研)、『続アートびっくり箱』(学研)、『ねっこのルーティ』(パロル舎)、『ねっこのルーティ(電子書籍版)』(BowBooks)など。




サインペン/210×295mm




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