第165回「貧の人」
「ヌー! ブー!」って叫び声をあげて大きくジャンプする。
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右側はユーモア感があるよね。左側は、足を踏ん張り、垂らした両腕のポーズがエアギターのようなかっこいい感じになってる。長髪がなびいてる感じにもなってる。 |
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これは、書家の井上有一の代表的な書「貧」をカーボンでなぞって紙に描き写し、マス目状に区切って色を塗ったもの。あきらさんらしい、しっかり色を塗ったポップアートな作品になっている。 |
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いやいや、この「貧」という文字も私がなぞったんだよ。彼も高校生の頃はコンパスや定規を使って、自分でいろいろ精緻なデザインをしてから色を塗っていたのだけれど、今は形を描かない。提供された形に色を淡々と塗っていく。 |
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うん。今はどうも、自分が色を塗る人って決めた感じがあって、何も描いていない紙を渡すと「ブー!」って怒って突き返してくる。「それは、お前の仕事だろう! 何か形を描いてから持ってこいよ!」って言ってるみたいなんだね(笑) |
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見上げるくらいの身長(193cm)があるから、怒られると迫力があるんだけど、それでも負けずに動物の写真とか抽象的な模様とかを示して「これを描いてよ」というと、「ヌー! ブー!」って叫び声をあげて大きくジャンプする。 |
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それでも知らんぷりしていると、ついには床に寝転がる。とにかく「色を塗るだけ!」って主張を貫く。で、私の方が結局負けちゃうんだよ(笑) |
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でも彼、私が文字をなぞっているのを横目で見ているから、いつか自分からやるんだろうなぁって期待している。あきらさんなら、簡単にできる技術だもの。 |

よこはちは、名もない女性編集者。障がいを越えて表現を楽しむアートスペース「フェースofワンダー」の仲間たちの作品に惹かれ、主宰者のまねきねこさんに「くすくすミュージアム」で絵を紹介しないかと持ちかけました。
まねきねこさんは、「フェースofワンダー」で個性に合わせた素材、道具、画法開発を大切に考えた活動を展開するかたわら、「指導者養成講座」にも取り組んでいる人物です。
主著に『アートびっくり箱』(学研)、『続アートびっくり箱』(学研)、『ねっこのルーティ』(パロル舎)、『ねっこのルーティ(電子書籍版)』(BowBooks)など。

