第102回「げんさんの心模様」

やっぱりげんさんは、本当のアーティスト。

すごい、立体的に見える。なめらかな曲線をえがいていますね。
うん。最初は、風に揺らぐカーテンみたいな模様だなぁと思っていたけれど、あらためて見ると、もっと抽象的な何かが表現されている気がする。カーテンの向こうの雨雲の空とか、こちら側のアパートの生活とか……。
あ、カーテン。本当ですね。家で寝転がって、風に揺れるカーテンを見つめていると、気持ちいいんですよね。
これを砂丘の段丘みたいだと言った人もいるし、天気図の等圧線、気圧の谷とか山とか、そんなものをアート的に表現してるって言った人もいる。
見つめていると、何だか静かな気持ちになれますね。色もいいなぁ。
この絵を壁に貼って、見るともなく見ていると、ぼくらには見えないもの、日々積み上がっていくストレスとか不安とか、疲れ……そんなものがにじみ出してくるのかもしれない。
げんさんは話さない人だから、内に秘めたものを、少しずつこの絵に織り込んでいるのかもしれませんね。
そうだね。15年以上も一緒に描いているけれど、話さない。だから本当のところはわからないけれど、どんな気持ちで描いているのか聞いてみたいなぁ。そうそう、この絵は、フェースofワンダーの現場ではなく、家で描いてきたんだ。
えっ、家で描くことなんてあるんですか!?
いや、今まではなかったんだよ。だから、持ってきたときはびっくりした。なぜ家で描いたんだろう? なぜここまで精緻に描いたんだろう。
それはもう、描きたくなったから描いたってことなんでしょうね。
一人で部屋に閉じこもり、黙々と線を描いている姿を想像すると、やっぱりげんさんは本当のアーティストなんだなぁと思うよ。
2013.07.09(tue)




よこはちは、名もない女性編集者。障がいを越えて表現を楽しむアートスペース「フェースofワンダー」の仲間たちの作品に惹かれ、主宰者のまねきねこさんに「くすくすミュージアム」で絵を紹介しないかと持ちかけました。
まねきねこさんは、「フェースofワンダー」で個性に合わせた素材、道具、画法開発を大切に考えた活動を展開するかたわら、「指導者養成講座」にも取り組んでいる人物です。 主著に『アートびっくり箱』(学研)、『続アートびっくり箱』(学研)、『ねっこのルーティ』(パロル舎)、『ねっこのルーティ(電子書籍版)』(BowBooks)など。




ボールペン/サインペン/340×250mm




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